Clashを家中の端末で共有する設定ガイド|分流のコツ

Clashの接続を自宅の複数端末で使うための実用ガイドです。LAN共有の有効化からポート設定、国内サイトを直接接続するルール作成まで、環境別にわかりやすく紹介します。

Clashを自宅の複数端末で共有すると、パソコンだけでなく、スマートフォン、タブレット、テレビ、ゲーム機などから同じプロキシ経路を利用できます。ただし、Clashを起動した端末の通信を他の端末へ自動的に配布できるわけではありません。共有元でLANからの接続を受け付け、利用端末側で共有元のIPアドレスとプロキシポートを指定する必要があります。

基本的な通信経路は、家庭内LANに接続した端末からClashを実行しているパソコンへ接続し、Clashがルールに従ってDIRECTまたはプロキシグループへ振り分けるという構成です。共有元のパソコンがスリープしたり、Wi-Fiから切断されたり、IPアドレスが変わったりすると、家中の端末で同時に通信できなくなる可能性があります。最初に構成を単純化し、1台のクライアントで動作を確認してから端末を増やすのが安全です。

SHARING MODEL

家庭内共有の仕組みと役割を整理する

ClashのLAN共有では、Clashを実行しているパソコンがプロキシサーバーとして動作します。利用端末はそのパソコンのLAN側IPアドレスに接続し、HTTPプロキシ、SOCKS5プロキシ、または両方を受け付けるmixedポートを利用します。たとえば共有元が 192.168.1.20、mixedポートが 7890 の場合、スマートフォンや別のパソコンにはホストとして 192.168.1.20、ポートとして 7890 を設定します。

共有元のIPアドレスには、インターネット側のグローバルIPではなく、家庭内ルーターから割り当てられたプライベートIPを使います。一般的には 192.168.x.x、10.x.x.x、172.16.x.x から 172.31.x.x の範囲です。Clashを実行しているパソコンが複数のネットワークインターフェースを持つ場合、Wi-Fi側と有線LAN側でIPが異なるため、利用端末と同じネットワークにあるアドレスを選びます。

SHARED HOST

共有元

Clashまたはmihomoコアを実行し、LANからのプロキシ接続を受け付けるパソコンやAndroid端末です。常時起動と安定したLAN接続が重要です。

CLIENT DEVICE

利用端末

共有元のIPアドレスとプロキシポートを指定して通信するスマートフォン、タブレット、別のパソコンなどです。

LAN PORT

待受ポート

Clashが家庭内LANからの接続を待ち受ける番号です。HTTP、SOCKS、mixedの種類とポート番号を取り違えないようにします。

Clash VergeやClash Verge RevなどのGUIでは、「設定」「General」「Profiles」周辺にポートやLANアクセスの項目が配置されていることがあります。Clash for Androidやmihomo系クライアントでは、設定画面の「ポート設定」「Allow LAN」「LAN共有」などの名称を確認してください。表示名はクライアントによって異なりますが、探す項目は allow-lan、待受アドレス、mixed-port、http-port、socks-port です。

LAN ACCESS

Clash側でLAN共有と待受ポートを有効にする

共有元のClash設定では、LANから接続できる待受アドレスを指定します。ローカル端末だけから利用する 127.0.0.1 のままでは、他の端末から接続できません。LAN共有を有効にして、すべてのインターフェースで待ち受ける 0.0.0.0 を使う構成が一般的です。ただし、パソコンが信頼できないネットワークにも接続する場合、すべてのインターフェースで公開する範囲が広くなるため、ファイアウォール側で家庭内サブネットだけを許可してください。

mixed-port: 7890
allow-lan: true
bind-address: "*"
mode: rule

rules:
  - DOMAIN-SUFFIX,example.jp,DIRECT
  - GEOIP,JP,DIRECT
  - MATCH,PROXY

mixed-port はHTTPとSOCKS5の両方を受け付けるポートです。利用端末側の設定形式が分からない場合に便利ですが、クライアントがHTTP専用またはSOCKS専用として動作する場合は、http-port または socks-port を個別に設定します。同じ番号を複数のサービスに割り当てることはできないため、すでに別のアプリが 7890 を使用している場合は、Clashのログにポート作成失敗が表示されます。

項目 例 役割 確認ポイント
allow-lan true LANからの接続を許可 無効のままだと外部端末から接続できない
bind-address * または 0.0.0.0 待受インターフェースを指定 127.0.0.1だけではLAN共有できない
mixed-port 7890 HTTPとSOCKSを共通ポートで受付 他のサービスとのポート重複を避ける
mode rule ルールに従って経路を選択 Globalでは全通信が同じ出口になる

HANDS-ON SETUP

実際に1台のスマートフォンから接続する手順

ここでは、ClashをWindowsまたはmacOSのパソコンで実行し、同じ家庭内Wi-Fiに接続したスマートフォンから利用する例を説明します。設定を変更する前に、共有元のパソコン単体でClashが正常に動作し、ブラウザーから対象サイトへアクセスできることを確認してください。共有元自体が接続できない状態でLAN設定を追加すると、原因の層が増えてしまいます。

  1. 共有元のパソコンを家庭内Wi-Fiまたは有線LANへ接続し、現在のLAN側IPアドレスを確認します。Windowsではコマンドプロンプトで ipconfig、macOSでは「システム設定」から接続中のネットワーク詳細を開きます。
  2. Clashの一般設定でLAN共有を有効にし、mixedポートを 7890 など未使用の番号に設定します。設定を保存したあと、コアを再起動するか設定を再読み込みします。
  3. OSのファイアウォールが確認を求めた場合は、家庭内のプライベートネットワークだけでClashの待受を許可します。パブリックネットワークへの許可は必要がなければ有効にしません。
  4. スマートフォンを同じSSIDのWi-Fiへ接続します。ゲストWi-Fiや端末間通信を禁止する分離機能が有効なSSIDでは、同じルーターでも共有元へ到達できないことがあります。
  5. スマートフォンのWi-Fi詳細設定でプロキシを手動に変更し、サーバーへ共有元のLAN側IP、ポートへ 7890 を入力します。AndroidとiOSでは設定項目の名称や適用範囲が異なります。
  6. まず通常のWebページを開き、Clashの接続ログにスマートフォンからのリクエストが表示されるか確認します。ログが増えなければ、IP、ポート、Wi-Fi分離、ファイアウォールを優先して調べます。
  7. 国内サイトとプロキシ対象サイトをそれぞれ開き、ルールに応じてDIRECTとプロキシグループが選択されることを確認します。

スマートフォンのWi-Fiプロキシ設定は、そのWi-Fiネットワークに接続している間だけ適用されることがあります。モバイルデータ通信へ切り替えた場合や、別のSSIDへ移動した場合は、同じ設定が自動的に利用されるとは限りません。また、一部のアプリはWi-FiのHTTPプロキシを読み取らず、独自の通信方式や証明書検証を使います。その場合は、アプリ側のプロキシ対応を確認するか、共有元ではなく端末上のTUN対応クライアントを検討します。

CLIENT CONFIGURATION

端末ごとのプロキシ設定と対応範囲を確認する

WindowsやmacOSの別端末では、OSのネットワーク設定に共有元のIPアドレスとポートを入力できます。HTTPプロキシ欄とHTTPSプロキシ欄の両方へ同じClashのmixedポートを指定する構成がよく使われます。SOCKS5を利用するアプリでは、SOCKSホストに同じIP、ポートに 7890 を指定します。HTTPプロキシとSOCKS5は認証やDNSの扱いが異なるため、アプリの説明に合わせて選択してください。

端末 設定場所の例 入力する値 注意点
Windows 設定 → ネットワークとインターネット → プロキシ 共有元IP、HTTPポート アプリによってはOS設定を使わない
macOS システム設定 → ネットワーク → 詳細 → プロキシ HTTPまたはHTTPS、必要に応じてSOCKS サービスごとに設定が分かれる
Android Wi-Fiネットワークの編集 → プロキシ 手動、共有元IP、ポート Wi-Fi単位の設定であることが多い
iOS / iPadOS Wi-Fi → 接続中SSID → HTTPプロキシ 手動、共有元IP、ポート HTTPプロキシを使わないアプリがある
テレビ・ゲーム機 ネットワーク詳細設定 対応するプロキシ項目 HTTPS、UDP、証明書、DNSの対応を個別確認

テレビやゲーム機では、HTTPプロキシ設定があってもすべての通信がClashを通るとは限りません。ゲームのUDP通信、独自の名前解決、アプリ内の接続処理は、OSのプロキシ設定を使わない場合があります。接続できないときは、Clashのログにリクエストが到達しているかを確認し、ログに何も出なければ端末側の対応範囲を疑います。ログに出ているのに失敗する場合は、ルール、DNS、プロキシグループ、対象サービスの通信要件を調べます。

家族が使う端末をすべて同じ共有元へ接続する場合、通信量と同時接続数も増えます。動画再生や大容量ダウンロードが始まると、ノードの帯域や共有元パソコンのWi-Fi性能を消費し、他の端末の応答が遅くなることがあります。利用端末が多い家庭では、共有元をルーターに近い有線LANへ接続し、定期的にログと接続数を確認してください。

ROUTING RULES

国内サイトをDIRECTにし、海外通信を分流する

家庭内共有では、すべての通信をプロキシへ送るGlobalモードより、Ruleモードで用途別に振り分ける構成が管理しやすいでしょう。ルールは上から順に評価され、最初に一致した処理が使われます。LANアドレス、ルーター管理画面、国内サイト、特定のアプリやドメインを先に指定し、最後に海外通信をプロキシグループへ送る MATCH を置きます。

mode: rule

rules:
  - IP-CIDR,192.168.0.0/16,DIRECT,no-resolve
  - IP-CIDR,10.0.0.0/8,DIRECT,no-resolve
  - DOMAIN-SUFFIX,router.local,DIRECT
  - DOMAIN-SUFFIX,jp,DIRECT
  - GEOIP,JP,DIRECT
  - MATCH,PROXY

GEOIP,JP,DIRECT は接続先IPの登録地域を基準にしますが、CDN、クラウド、海外経由の名前解決によって、想定と異なる結果になることがあります。DOMAIN-SUFFIX,jp,DIRECT も、ドメイン末尾が .jp であるサイトにしか一致しません。国内サービスを確実に直接接続したい場合は、公式ドメインを DOMAIN-SUFFIX で個別に追加し、ルールプロバイダーを使う場合は更新成功と実際のマッチ結果を確認します。

家庭内のプリンターやNASへアクセスする場合、プライベートIPのDIRECTルールを国内サイトのルールより前に置きます。ルーター管理画面の名前解決が不安定な場合は、管理画面のIPアドレスを直接指定する方法もあります。ただし、ネットワークアドレスは家庭の構成に合わせて変更してください。例にある 192.168.0.0/16 は広い範囲を表すため、より限定的な 192.168.1.0/24 を使える環境では後者のほうが意図しない経路を減らせます。

分流確認の順番

  1. 共有元のIPアドレスとポートが正しいか確認する。
  2. Clashの接続ログで、利用端末のリクエストが表示されているか確認する。
  3. 国内サイトを開き、ルール欄が DIRECT になっているか確認する。
  4. プロキシ対象サイトを開き、選択中のプロキシグループへ送られているか確認する。
  5. 想定外のルールに一致した場合は、上にある広すぎるルールやルールセットを見直す。

DNS AND SECURITY

DNS、端末分離、ファイアウォールを安全に調整する

共有時のDNSは、プロキシ設定とは別に考える必要があります。利用端末が名前解決を自分で行い、ClashにはIPアドレスだけを渡す場合もあれば、Clash側でDNS処理を行う場合もあります。国内サイトをDIRECTへ送る構成では、名前解決の結果と実際の接続経路が一致しないと、速度低下や接続失敗が起こることがあります。まずはClashのDNS設定を大きく変更せず、共有元単体で安定している構成を使い、問題が出たときだけDNSログを確認してください。

Wi-Fiルーターの「AP isolation」「プライバシーセパレーター」「ゲストネットワークの端末間通信を禁止」といった機能が有効だと、スマートフォンから共有元のパソコンへ接続できません。共有元と利用端末が同じIPアドレス帯に見えても、無線アクセスポイントが端末間通信を遮断している場合があります。通常の家庭用SSIDへ接続して再確認し、ゲストSSIDを使う場合はルーターの端末分離設定を確認します。

ファイアウォールでは、Clashの実行ファイル全体を無条件に許可するより、必要なTCPポートと家庭内ネットワークだけを対象にするほうが安全です。共有終了後はLAN共有を無効にするか、プロキシポートを閉じてください。Clashの外部コントローラー用ポートは、LANプロキシ用ポートとは別の管理インターフェースです。外部コントローラーを 0.0.0.0 で公開したり、認証なしで待ち受けたりしないでください。

TROUBLESHOOTING

接続できないときの切り分けと安定運用

症状 確認する場所 対処
利用端末のログがClashに出ない 共有元IP、ポート、Wi-Fi分離、ファイアウォール 同じSSIDへ接続し、LAN側IPと待受状態を再確認する
ログは出るがすべてタイムアウトする 選択中のノード、プロキシグループ、共有元の基本接続 共有元単体でテストし、正常なノードを選び直す
国内サイトだけ遅い DIRECTルール、DNS、ルールの順番 該当ドメインのマッチ結果と名前解決を確認する
一部アプリだけ接続できない アプリのプロキシ対応、UDP、証明書検証 アプリ独自のプロキシ設定またはTUN対応を確認する
翌日から接続できない 共有元のIP変更、スリープ、ルーターの再起動 DHCP予約を設定し、共有元を有線接続にする

最も多い原因は、共有元のIPアドレスがDHCPによって変わることです。前日に 192.168.1.20 だったパソコンが、ルーター再起動後に 192.168.1.35 になると、利用端末は古い宛先へ接続し続けます。ルーターにDHCP予約機能がある場合は、共有元のMACアドレスに固定的なLANアドレスを割り当てます。固定IPを手動設定する場合は、DHCP配布範囲との重複を避け、ゲートウェイとDNSの値を誤らないようにしてください。

安定運用では、共有元パソコンのスリープ設定、ネットワークの自動切り替え、Clashの自動起動も確認します。ノートパソコンを閉じたときにWi-Fiが停止する設定、OS更新後にファイアウォール規則が初期化されるケース、Clashのコアが更新されて設定フィールドの互換性が変わるケースがあります。変更前には正常な設定をバックアップし、更新後は共有元単体、次に利用端末1台という順で動作を確認します。

複数端末を接続したままルールを変更する場合は、まず1台のログで期待する経路になっていることを確認します。ルールの編集、DNSの変更、TUNの有効化、ポート変更を同時に行うと、どの変更が影響したか分からなくなります。LAN共有は便利ですが、共有元がすべての端末の通信入口になるため、必要な範囲だけを公開し、設定とログを定期的に見直すことが重要です。

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